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ノ・ムヒョン氏、逝去

このニュース、私は仕事中にネットニュースで知りました。韓国に関心を持つ人間としては、やはりショックです。

韓国現代史の中におけるノ・ムヒョン氏の位置づけについては、玄武岩『韓国のデジタル・デモクラシー』(集英社新書、2005年)という本がわかりよいように思います。この本では、ノ・ムヒョン氏が「朝中東=朝鮮日報中央日報東亜日報」に代表される大メディアへの抵抗を経て、大統領となったことが詳細に述べられています。

そうした経緯もあってか、ノ・ムヒョン政権に対する「朝中東」の報道姿勢は、確かにおしなべて冷淡なものであったように、私も思います。とりわけ『朝鮮日報』などは、ノ・ムヒョン氏の対北政策を冷笑的にこき下ろし続けていましたし、イ・ミョンバク氏に政権交代するときも、「ノ・ムヒョンが崩壊させた韓国経済の立て直しを期待」という姿勢を前面に出していたように思います。

そして、日本の大メディアでも、「朝中東」と提携しているせいか、こうした偏向報道をそのまま垂れ流すような記事が非常に多く見られました。私は普段は『朝日新聞』(<『東亜日報』と提携)を購読しているのですが、少なくとも韓国のニュースに関するかぎり、とてもそのまま鵜呑みにはできないような記事がいつも並んでいます。例えば2008年の「ろうそく集会」に関する報道でも、要するに「考えの浅い中学生たちがネット上で盛り上がって開いた集会が、多数の人に伝播している」「過激な集会行動などやめて『市民生活』に戻るべきだ」という、「朝中東」そのままとしか言いようのないザコ記事が連発されました。ですので、韓国のニュースについては、私は基本的に『ハンギョレ』のサイトを見るようにしています(<日本語版がないのが残念です)。

それにしても、日本の(考えの浅い)ネット住民たちの間では、「ノ・ムヒョン=『親日派』とされた人たちの財産を取り上げた悪党」という評価が定着しているようで、これも残念です。そもそも過去の大統領の多くが財閥を支持基盤としており、財閥の多くが、植民地時代や戦後復興の中で日本と結託して蓄財してきたことを思えば、「親日派」の財産を没収するという立法が単なる人気取りとばかりも言えないように思います。Wikipediaの記事で触れられている『朝鮮日報』の反応などは示唆的です。

もっとも、私はノ・ムヒョン氏を積極的に支持してきたわけではありません。彼が政権を取っていた時代に韓国の「格差社会」化がいっそう進行したのは事実である(と思われる)のですし、彼はそれに対する有効な手だてを講じたわけではないのですから。でも、日本のネットニュースを見ていると、ノ・ムヒョン氏逝去を報じる記事に浅知恵ネット住民たちがこぞって群がり、大量のネガティブ・コメントを書き残していて、なんとも暗い気持ちになります。たぶん、こうやってブログ記事を書くことで、どこからともなく浅知恵な人が飛んできて、意味不明なコメントを残したりもするのでしょう。その種の「人間として残念な人」を相手にするのは煩わしいので、そうならないことを願いたいのですが。

ともあれ、いまは、ノ・ムヒョン氏のご冥福を祈りたいと思います。そして、せめて彼の死が自殺(または事故死)であった、という報道が、事実であってもらいたいと願います。

黙祷