虎ときどき牛(奥の間)@はてな

「虎ときどき牛(奥の間)」@Yahoo!ブログからの引っ越し先です

「藤戸饅頭」で、清酒「大正の鶴」を飲む

しばらく前のことですが、親戚の法事で岡山県に行っておりました。

そのとき、久しぶりに会ったイトコに、「大手まんぢゅうをちょっとずつかじりながら日本酒をやると、酒の味がよくわかって、非常によいのだ」と、意外な飲み方を教えてもらいました。

ちなみに「大手まんぢゅう」っていうのは、内田百間(<ホントは「もんがまえ+月」という字です)の「幼年時代」というエッセイにも名前が出てくる、岡山では非常に有名な薄皮饅頭です。岡山土産というと「きびだんご」が挙げられがちですが、岡山の人からすれば、きびだんごなどは下等な食べ物(!)だ、ということで、地元の人はよく、この「大手まんぢゅう」を手みやげにします。ほんとうに薄い皮の饅頭なので、ほとんどアンコの塊みたいなものなのですが、イトコはそれをサカナに酒を飲む、というのです。

なんですが、じつはその「大手まんぢゅう」と非常によく似た「藤戸饅頭」というものがあって(歴史はこちらの方が古い、ということになっています)、両者の味の比較がたまにブログネタになってたりします。私はというと、断然「藤戸饅頭」派です。「大手まんぢゅう」よりは少し強めの甘さですが、決してしつこくなく、むしろさらっとした味です。しかも、土台となるあずきの味はきちんと感じられつつも、エグみがないところがいいのです。

「大手まんぢゅう」も確かにおいしいんですが、こちらは何というか、飛び抜けたところがなくて、「工場で作りましたね」っていう味に思えるんですよね。あっさりしていると言えば、まあ言えなくもないですが、やっぱり「藤戸饅頭」と比べると、あずきの風味が弱く思えて、私には今ひとつ物足りない感じがします。だいいち、「大手まんぢゅう」が賞味期限1週間~10日程度(だったと思う)であるのに対して、「藤戸饅頭」は3日くらいしかないんですよ。持ち帰って職場の人にあげるとしても、「今日中に食べてくださいね!」という状態なのです。押しつけがましさ全開なお土産です(でも買って帰るんですけど)。そのへんからしても、味の違いが推し量られるような気がしませんか。

てなわけで、その「藤戸饅頭」(<冷凍保存したものを電子レンジで解凍。これが最後の1個だ……)をサカナに、日本酒をやってみました。
イメージ 1

酒は、これまた岡山県の「大正の鶴」という、知る人ぞ知る酒です。いま検索してみたら、なんとヤフブロに蔵元さんのブログがあったので、リンクしちゃいます(ついでにお気に入りにも入れちゃいます)。じつは父親の実家がこの蔵元さんのすぐ近所なので、この酒にはなじみがあるのです。カルスト台地の麓にあるだけあって、使っている水が硬めなのでしょう。硬くてスキッとした味わいの、辛口の酒です。広島あたりの柔らかい酒とは好対照、という感じです(<もちろん「広島の酒もおいしい」という意味ですよ、誤解なきように!)。

おっと、話がそれました。その「藤戸饅頭」と「大正の鶴」でやってみたわけですが、結論から言うと、非常にうまいです。というか、ヤバいです。うますぎます。くだんのイトコは「酒の味がよくわかる」と言っていたのですが、私なりに試してみると、「饅頭の味こそよくわかる」という印象です。「藤戸饅頭」のさらっとした餡と、「大正の鶴」のスキッとした後味の組み合わせが、バッチリです。でもこれ、酒も饅頭もうまくなければできない組み合わせですよ。たとえば安物のクドいアンコの饅頭では、とても飲めた(食えた)ものではない、と思います。そういう意味で、これはなかなか贅沢な飲み方のようです。

しかし、困ったことに、これでとうとう、私は手元の「藤戸饅頭」を食べ尽くしてしまいました。せっかくうまい飲み方を教わったというのに。「大正の鶴」はもうちょっとあるんですけどね……。その相棒を務めるに足る饅頭、うまく見つけられるでしょうか。なければ、「藤戸饅頭」か「大手まんぢゅう」をどこかで手に入れなければ……。